Hanes fik

スウェーデン語の語源やら、読書のことやら、あれこれと。

マルクスと父親

書籍『マインクラフト』の読みどころは、マインクラフトのビジネスで上の 成功を分析していることだけではなく、 マルクスをはじめ周囲の人物をいきいきと描いていることだ。 マルクスの家族をめぐる問題も重く静かに語られている。

マルクスのこのブログ記事は、彼が父親を偲んで書いたものだ。 I love you, dad The Word of Notch, 2012.12.13

マルクスは子ども時代、そりに乗った自分を牽引してくれる父親の 姿を見ながら、父には父の考えがあり、自分が生まれる前から 父には父の人生があったのだと悟る。早熟な子どもだったようだ。

マルクスの父は、かつては薬物・アルコール依存症者だったが、 信仰と意思の力で結婚後の家庭には問題を持ち込まなかった。 ところが、マルクスが十代に入ったころに再びクスリに手を出すようになる。 両親は離婚し、しばらく父子の関係は途切れてしまったが、 やがて和解の時期を迎える。そしてまた、親子の交流がはじまった。

マルクスの挑戦を励まし、成功を喜んでくれた父親。 コンピュータゲームの攻略のヒントを息子に尋ねてくる父親。

父親はクスリの誘惑や都会の喧騒を避けるために田舎に住んでいた。 ある日、湖にはった氷が割れて、父親が水中に落ちてしまった。 それを見たマルクスはパニックになるが、水深は父親の腰くらいしかなく、 彼の命に別条はなかった。

あの大きな体で湖畔を走り回るマルクスを想像すると どことなくコミカルな感じもするが、同時にじんとなる文章だ。 マルクスは父親を失うかもしれない恐怖を味わっていたのだから。

だが、結局そのとおりになってしまった。 父親が銃を使って自殺してしまったのだ。

マルクスは、ラスベガスでおこなわれた初めてのマインカンに 家族全員を連れて行った。 そこで父親は、大勢のファンがマルクスを取り囲むのを見た。 田舎でひっそりと暮らしていた人が、突然、 喧騒の中に連れだされたことになる。

書籍によると、自殺はマインカンの1か月後のことだったという。

このブログ記事には、父親を慕う気持ち、切ない思い、無念な心情が 詰まっている。