Hanes fik

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【読書感想】少女と負い目2~同情できない女たち~

 

Katarina Wennstam 著『Flickan och skulden』についての昨日の記事への補足事項。本書の問題提起は何点もある。

 

前回も述べたが、当時(2002年)刑法上、被害者が事件当時「無力状態」であれば、罪名が「レイプ」ではなく「性的搾取」となった。著者によると、当時の刑法の解釈はこのようであった。

女性が犯人に強制的に酒を飲まされたりクスリを打たれたりした後に、犯人から暴行を受けた場合はレイプになる。
しかし、女性が犯人に出会ったときにすでに自主的に酒を飲んで酔っており、その後に犯人がセックスを強いた場合にはレイプにならないのだ。
また女性が自分の意に反して薬物で放心状態になっていたとしても、それでレイプが認められる可能性はないに等しい。

無力状態に陥るのはクスリなどもありえるが、多くは飲酒が原因である。
それゆえ裁判では、被害者がいつ、どのようにして、どれくらい酔っぱらっていたのかが執拗に問われる。

だから著者は次の批判を引用する。

居酒屋でのケンカが発展して殺人事件が起った場合では、裁判所が真っ先に注目するのは被害者の血中アルコール濃度ではない。
他の犯罪同様、性犯罪においても、まずは被告(加害者)の行動に注目すべきである。
(Madeleine Leijonhufvud(マデレーン・レイヨンフヴド)教授の論文)

 

もう一つの問題点は、レイプは必ずしも暴力や脅迫を使っておこなわれるものではないこと、またレイプ犯の多くは被害者と顔見知りであるという点である。つまり、身近に起こりうる犯罪なのだ。
本書は女子高生ヨンナがホームパーティーで酔っぱらい、眠っている間に同級生たちにレイプされるケースから始まる。

2015年に発表されたこのアメリカの著作も同様のケースを扱っている。酔って眠っている間に幼なじみに襲われる事件が発端だ。
『ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』

 

法律は「身持ちのよい女が夜道を歩いていて見知らぬ男に襲われた」ケースを想定しているようだが、現実は違うと著者はさまざまな事例を挙げ反論している。

 

第三に私が感じたのは、「隙だらけの女」にどこまで同情できるか、ということだ。この本には飲酒や異性との関係で問題だらけと感じられる少女が何人も登場する。私に娘がいれば「ああなってはいけません」と説教の種にするだろう。

だが、彼女たちの「問題行動」の裏には何か他の原因があるのかもしれない。すでにそれ以前から社会的弱者だったのかもしれない。弱ければ殴ってもいいのか? バカだから騙してもいいのか? そして、ふしだらなら襲ってもいいのか?
「隙だらけの女」でも人間としての価値は他の人と変わらない、という人権思想を著者たちは強調しているのだと感じた。